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2024.08.23
学校生活

2年生体験学習(看護編)

 正則高校では、2年生の希望者を対象に毎年夏休みに保育、看護、介護、農業の4つの分野で「体験学習」を実施しています。 

 「体験学習」は職業体験という位置づけにとどまるものではなく、学校での学びの枠組みから飛び出し、実際の現場に赴き、そこで働く方々との出会いや仕事を通して“社会のありよう”を学んでいこうとする試みでもあります。希望制ではありますが、目指している進路分野ということは勿論のことですが、興味関心があるといった動機も含め多くの生徒たちが毎年参加しています。今回は、看護分野の体験学習の様子についてレポートします。 

 

  看護分野では、毎年、大田区の大田病院が実施している看護体験に生徒たちが(実施日と自身の予定を調整し)申し込み、参加をしています。今回は8月20日に実施された看護体験の様子を取材させていただきました。一般公募されている体験学習ということもあり、正則生以外の高校生も参加していました。集合時間に集合すると、看護学生室の方々から看護体験の内容や準備といった実際の作業についての注意事項や心構えについてのレクチャーがあります。体験学習とはいえ、入院されている患者さんたちと実際にふれあっていくこともあり、入念な打合せをしていきます。 

 

 レクチャーが終わると、3~4人ほどのグループにわかれて患者さんたちのもとにむかいます。今回は、参加した学校ごとにグループを組むことができたので、正則生は“チーム正則”として患者さんたちのもとにむかいました。看護学生室の方々の案内で患者さんたちのいらっしゃる病棟までいくと、その後は担当の看護師の方が引き継いで丁寧に対応をしてくれました。 

 

 今回の看護体験では患者さんたちの足浴のお世話をさせていただきましたが、足浴用のバケットの中にお湯を入れれば準備完了という単純なものではなく、お湯の加減調整から石けん、入浴剤、タオルなどをスムーズに作業ができるよう準備していくので、思った以上に時間と手間がかかっていました。しかし、その時間と手間は入院生活を送られている患者さんたちにとって足浴が負担となることなく、心地良いものとなるための準備でもあります。また、コロナなどの感染症についても十分な注意をはらっていく必要があるため、マスク、フェイスシールド、ビニール製のエプロンなどに身を包み、完全防備をした上で、患者さんに対応をしていきます。 

 

 担当の看護師の方が患者さんを連れてきてくれます。普段ならば、看護師や病院スタッフの方々が出迎えてくれているのでしょうが、今回は、“高校生”が登場しました。

 普段とは違うことに驚かれたりするかなと心配しましたが、患者さんたちはとても優しく接してくれました。しかし、そんな患者さんたちを前にしても生徒たちは少々緊張ぎみの様子でした。すると、すかさず、看護師の方が、生徒と患者さんがスムーズにコミュニケーションがとれるよう間にはいってくれていました。思わず、「さすが!プロは違う!」と感心をしてしまいました。 

 

 

 

 看護師の方のおかげで、ほどなく緊張が和らぐと、レクチャー通りに生徒たちは患者さんの足浴の作業に取りかかっていきました。 患者さんの足を洗い、その後は入浴剤でマッサージをしたり、終わるとタオルで綺麗にお湯を拭き取るといった一連の作業を生徒たちは一生懸命にやっていました。最初こそ、生徒たちは不安な思いからか、緊張した面持ちでいましたが、それでも「お湯加減はどうですか?」「痛くはないですか?」といったことを患者さんに尋ねてみると、「とても気持ちいいよ」といった返事がかえってきて、生徒たちは笑顔をみせていました。 

 

 その間も看護師の方は、生徒たちの作業を見守りつつ、学校のことを話題としてくれたりして、生徒たちは勿論のことですが、患者さんもリラックスできるような場の雰囲気づくりをしてくれていました。そんな何気ない気遣いも看護なんだなと改めて思いました。こうして、およそ1時間の足浴実習は終わりました。 

 

 実習が終わると、ミーティングルームに全グループが集合し、実習での感想を共有しました。そして、看護学生室の方々から看護師となっていくために必要なことについてアドバイスがあり、さらに、看護師の方を招き、質疑応答の場も設けていただきました。

 

 「看護師になろうと思ったのはなぜですか?」「(看護師としての)やり甲斐はどんなことですか?」といった質問が生徒たちからありましたが、その中で「看護学校はどうでしたか?」といった質問について「もう一度やれと言われたら、もう嫌ですと言うと思うし、そのくらい大変でした」という話とともに「それでも、今の仕事にとても役だっているし、なにより命に関わる仕事である以上、その勉強や実習経験が大変なのは当然のことで、だからすごく大変ではあったけど、とても充実した中身の濃い時間でもありました」と答えられていたのが印象的でした。 質疑応答が終わると、参加した生徒一人ひとりが感想を発表し、会は終了となりました。 

 

 看護体験は午前中で終了するプログラムでした。当初は「短いなぁ~」なんて思っていたのが正直なところでもありました。しかし取材で参加させていただいてみて・・・午前中だけであっても学ぶべきことが本当にたくさんあったと思える“内容の濃い体験学習”でした。 

 

【編集後記】 

 よくよく考えてみれば、これまで私自身が病院にいった経験は、自身が病気やケガをしたり、もしくはお見舞いなどでいくこと以外はありませんでした。だから、病院を“医療現場”といった観点でみることはありませんでした。故に、医療現場で働いている方々についても、ドラマや映画で目にしたような“華やかさ”と、その一方で一般的に語られるような(華やかさとは裏腹に)大変でキツそうなイメージくらいしか知らなかったことを取材していくうちに改めて実感しました。例えば、看護師の方が患者さんと実際にふれている場面では、(看護師の方は)必ず目線をあわせる、つまり(患者さんを)“見下ろす姿がない”ことに気付かされました。きっと看護師の皆さんは無意識にそうされているのだろうと想像します。それでも、医療現場において人と人とが関係をつくっていくことも「看護」だとすれば、“そうした姿勢”こそが重要なのではないか・・・そんなことを考えさせられるような場面があったからです。少なくともこれまで病院にいって気付いたり、考えたりしたことは一度もありませんでした。生徒たちも感想の中で患者さんとコミュニケーションをいかにとっていくのかということが難しいけど、とても大切なことだと思ったと語っていました。現在の医療現場を取り巻く社会情勢や環境に見て取れる問題なども話題となり・・・まさに日常の学校生活の枠組みを大きく飛び越えた学びができたと思います。 

 大田病院の看護学生室の方々、また、担当していただいた看護師の方々、本当にありがとうございました。

 

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